グリーンランド氷床に広く分布する小さな水たまりと微生物の関係を解明~氷上の生命のホットスポットが氷床の融解を左右する~

2025年12月09日

研究?産学連携

 188比分直播,足球比分网大学院理学研究院の竹内望教授、山梨大学総合分析実験センターの瀬川高弘講師、東京科学大学生命理工学院の村上匠助教らの研究グループは、グリーンランド氷床(図1)表面に存在する小さな水たまり(クリオコナイトホール(注1)(図2))を調査し、その物理的な形態(特に深さ)が、内部に生息する微生物の群集構造と炭素の蓄積量という生態学的特性を支配していることを明らかにしました。クリオコナイトホールは、太陽光を吸収して氷床の融解を加速させる「クリオコナイト(注2)」という暗い沈殿物を形成する、氷床上の生命活動のホットスポットです。本研究は、氷床ダイナミクス(クレバス(注3)の形成など)と表面の微生物生態系が密接に結びついていることを示し、将来の氷床融解速度や、極域の炭素循環の予測モデルを構築する上で不可欠な知見を提供します。     
 本研究成果は、2025年12月1日に、Communications Earth & Environmentよりオンライン公開されました。

■用語解説
注1)クリオコナイトホール:氷床表面にできる数cmから数十cm程度の水たまり。底部に堆積した暗色の沈殿物(クリオコナイト)が太陽光を吸収して氷を融かし、形成される。
注2)クリオコナイト:鉱物粒子や有機物、微生物などからなる暗色の物質。ホールの底部だけでなく、氷河表面に広がると氷河の融解を促進する。
注3)クレバス:氷河や氷床の表面にできる深い割れ目(ひび割れ)。氷の流れや地形の変化によって形成され、不安定なエリアを示す指標となる。

■論文情報
タイトル:Morphology shapes microbial ecosystems and carbon cycling within cryoconite holes on a Greenland outlet glacier.
著者:Nozomu Takeuchi, Takumi Murakami, Koki Ishiwatari, Akane Watanabe, Takahiro Segawa
雑誌名:Communications Earth & Environment
DOI10.1038/s43247-025-03045-y

  • 図1: 調査を行ったグリーンランド氷床の中西部
    (a)衛星写真(Sentinel-2, Copernicus Sentinel Data, 2017)
    (b)クレバスの発達した氷河の辺縁部
    (c)クレバスのない平らな氷河中央部